Journey のレビュー

人生を模した素晴らしいゲームだ。美しい背景と多くは語らないストーリー。それでも伝わってくるすべてがあり、一期一会の他プレーヤーとの、言葉さえ伝わらない交流もかけがえがない。一度、あるプレイヤーに出会ったことがある。その人はやり込み勢であることは明らかな白い服を着ていた。自分はキーボード操作でゲームプレイを行っていてド下手もいいところだったが、その人はなぜか早々に自分を見放すこともなく、旅を共にしてくれた。へろへろ飛ぶ自分の後ろにぴったり張り付いて、続いて飛べるように何度も手助けし、何度移動に失敗して落ちても、戻ってきて根気強く付き合い、自分はそれを不思議に思うほどだった。時折その人は、少し先に飛んでは、振り返って自分が来るのを待つ。不思議に思ってついていくと、そこは通常プレイで気づかなかった絶景や、あることさえ知らなかったオブジェクトがあったりした。通常プレイ勢の自分が知らない美しい景色、あることも知らなかったルート、それらのすべてをその人は、淀みなく自分に教えてくれた。何度もプレイしたはずなのに、全然何も知らなかったことに気づいた。世界がどんどん広がっていった。その人は、おそらくこのゲームを愛していたのだと思う。そして、何故か分からないが、ひよこの自分を弟子に見込んで、その人が愛した美しい景色のすべてを分かち合ってくれるつもりらしかった。教えてくれたことを覚えようと必死だった。たった数時間のこの不思議な師弟関係と一度きりの旅が、未だに忘れられない。庇われ守られて、世界を見た。期待されて、手を引いて導かれ、できるようになると信じてただ見守られることが、こんなに幸福なことだとはじめて知った。人生を模したこのゲームで何度も生きて死んだが、その中にこの何とも引き換えたくない幸福な数時間を加えることができた事は本当に幸運だった。今も、名も知らぬ師と過ごしたあの夢のような旅のことを思う。自分は覚えようと必死になったのにもかかわらず、それでも景色やオブジェクトの位置の半分も覚えられなかったが、それは自分が不肖の教え子であったためでなく、このゲームの作りこみの豊かさを表しているのだと考えたい。