Dyztopia: Post-Human RPG のレビュー
It's a game about quitting your job
アプリID | 2241200 |
アプリの種類 | GAME |
開発者 | BASS |
出版社 | BASS |
カテゴリー | シングルプレイヤー |
ジャンル | RPG |
発売日 | 5 1月, 2023 |
プラットフォーム | Windows |
対応言語 | English |

1 総評
1 ポジティブなレビュー
0 否定的レビュー
否定的 スコア
Dyztopia: Post-Human RPG は合計 1 件のレビューを獲得しており、そのうち 1 件が好評、0 件が不評です。総合スコアは「否定的」です。
最新の Steam レビュー
このセクションでは、{name} の最新 10 件の Steam レビューを表示し、さまざまなプレイヤーの体験や感想を紹介します。各レビューの概要には、総プレイ時間、肯定的・否定的な反応の数が含まれており、コミュニティのフィードバックを明確に示しています。
プレイ時間:
14661 分
[h1]偏執的とも言えるほどの情熱を注がれたキュート&ハードなJRPG[/h1]
おそらくあなたは、このレビューを読む前にトレイラーを観て「なんか MS ペイントで描いたみたいな絵だな」と感じたのではないでしょうか。まあね……たしかに美麗なグラフィックではありません。それはそう。
あるいは「移動が横スクロールになったからって何が面白いの?」と思ったかもしれません。まあね……トレイラー見ても横に歩いてるだけですもんね。それはそう。
でも、そうした第一印象だけで切ってしまうには、あまりに惜しいゲームです。
ユニークで歯応えのある戦闘システム。アイデアの詰まったギミックと探索し甲斐のあるマップ。ステレオタイプでない生き生きとしたキャラクターたち。大量のテキストに支えられた素晴らしいストーリー体験。膨大な数のアイテムとスキルによるキャラビルド。キャラクターの感情が伝わってくる豊富な表情差分。150 種類以上の敵と、そのすべてが最低 3 パターン持つ状態差分。
とにかくどこを取っても、個人製作では考えられないほどの狂気的な、偏執的な作業量と熱量に溢れています。そしてそれら膨大な要素が、どれひとつとして「単に多いだけ」でなく、ちゃんと意味を成して、面白いゲーム、すばらしい体験として組み合わさっているんです。
個人的には、ここ数年内にリリースされたターン制戦闘 JRPG の中で一番の作品でした。
その面白さは、実績取得率からも見て取ることができます。
まず悲しい面に目を向けると、Prologue Clear! の取得率が 3 割ちょっとしかありません。プロローグはゲーム序盤も序盤、会話なんかをどれだけ丁寧に追っても 1 時間ちょっとで終わります。でも、7 割のプレイヤーがそこまで行ってない。それだけ期待値が低い。泡沫インディーあるあるです。
ですが、Chapter 1 から 3 までのクリア実績を見てください。驚くほどの脱落率の低さです。2 ~ 3 に至っては完全に数字が一致している。ちょっとなかなかないですよ、こんなの。Chapter 2 クリアって、全体の 7 割ぐらいの進捗度で、そこから誰もやめてない。
プロローグを抜けたプレイヤーからカウントすると、そのほぼ半分がエンディングを見ていることになります。そこそこボリュームのあるインディー JRPG でこの数字、すごくないですか。
ちなみにクリアまではノーマル難易度でたぶん 1 周 15 ~ 25 時間くらいです。
ぼくはちょくちょく会話を翻訳にかけたり、キャラの装備ビルドに数十分も悩んだりしながら進めたので、最初のプレイでは 30 時間以上かかったかもしれません。
では詳細なレビューを。
[h2]そもそも横スクロールRPGってなに[/h2]
ってまず思いますよね。
しかも実際にプレイを始めてびっくりするんですけど、アクションゲームみたいにキビキビ動くんじゃなくて、ふつうの RPG みたいなマス目移動が横になってるんです。
いやこれほんとに面白いの? って最初は思いました正直。平面よりも Y 軸の自由度が減ってるだけじゃん、手抜きか? ってね。たぶん、最初にキャラを動かした時点で少なくないプレイヤーが脱落してます。
でもね。進めていくと、これが面白いんですよ。
単に横移動してたまにハシゴを上って……とかじゃなく、2 番目のトレイラーを観るとちょっと伝わると思うんですが、様々なギミックによってルートが上下左右に錯綜します。
つまりパズル的な要素がけっこう強く「あの宝箱どうやって取るんだ?」みたいのは日常茶飯事。ギミックの種類も豊富で応用パターンもなかなかあり、マップ探索がここまで刺激的な RPG はちょっと他に見ないほどです。
こればっかりはやってみないと実感しにくい点なんですが、絶対に見た目以上、想像以上の面白さがあります。
特にメトロイドヴァニアっぽい探索要素とか、RPG のダンジョンでたまに挟まるパズルパートとかが好物の方には、強くオススメできます。
[h2]戦闘がマジでいい[/h2]
そして戦闘がまた面白いし、新しいんですよ。
[h3]中期的リソース戦略、という新しさ[/h3]
まず新しいなと思ったのが、MP とスキルに関する仕様です。
このゲームの MP は最大値が 4 で、すぐ減り、またターンを経ればすぐ回復していきます。なんか流行りのデッキ構築ゲーみたいですよね?
でも違うのは、これが戦闘間で持ち越されることです。加えて、各スキルにはクールダウンタイムが存在し、これもまた戦闘間で引き継がれます。
ひとつひとつは別に目新しくはない。でもそれらが組み合わさって生まれているのが「中期的リソース戦略」という新しさ、そして面白さです。
ふつうのよくある RPG では、HP や MP といったリソースはすべて戦闘間で持ち越されて、目減りしていきます。よって必要とされるリソース戦略は「ある回復地点から次の回復地点までの間」をいかにやりくりするか、という長期的なものになります。町から町の間であったり、ダンジョンに潜っている間、などですね。
でも Dyztopia は、それよりも短いスパンでのリソース戦略を考えさせられます。
例えば、1 回の戦闘で CD の長い強スキルを使ったり、Flash と呼ばれるキャラの手番を終わらせない種類のスキルをたくさん使ったりして、MP を枯らして戦闘を終えたとします。すると、次の戦闘は MP が少ない状態から始まるうえ、頼れるスキルが軒並み CD 中とかで、かなりパフォーマンスが落ちてしまう。
これがキャラ一人ならまだしも、全員が全力をふり絞ってギリギリ 1 ターンキル!みたいになると、次の戦闘の開幕はひどいことになります。
ですから、MP もスキルもほどよく使い、強スキルもうまくローテーションして、みたいな工夫が必要になってくる。「MP が最大時のときのみ Flash 化する」のようなスキルの存在が、このインセンティブを後押しします。
つまり、非常に長い期間ではなくて、数回分まで先の戦闘を見越してのやりくりが求められるわけです。
これの何が面白いかというと、逆説的に聞こえるかもしれませんが、強いスキルをどんどん使っていけるんですね。
たしかに MP が枯れているとほとんど何もできないんですけど、なにせ上限が 4 なので、1 ~ 2 ターンもすればすぐ MAX まで戻せます。スキルのクールダウンも、長くて 5 ~ 7 ターンとかです。なので、たまにパーッと使っても、長い目で見たらそれほど問題にはならず、割とすぐ復帰できる。
例えばふつうの RPG で「MP を全部使う魔法」みたいのがあったら、そう滅多なことじゃ使えないと思うんですよ。でもこのゲームでは、消費 MP が 4 のスキルなんて当たり前にあるし、当たり前に使います。
つまりリソース戦略が中期的であることによって、短いサイクルでの節制とカタルシスが生まれているわけです。
[h3]戦略を意識した戦術、の面白さ[/h3]
実際のバトルの現場では、更に様々な要素があり、いかなる戦術によって上記のような戦略を達成するか、といった面白さに溢れています。
まず敵は弱点属性というものを何種類か持っていて、最初は非開示という、ここだけ見ればオクトパストラベラーみたいな感じ。そして敵の弱点をつくと Hype というリソースが溜まるんですが、これが戦略上重要な役割を果たします。
第一に、Hype があると、次ターン以降の MP 回復量が上がります。第二に、「Hype の分だけ消費 MP が下がる」「Hype の分だけヒット数と消費 MP が上がる」といった特性を持つスキルがあり、Hype に応じて省エネや大技といったスキルの性質に変化が生じます。
スキルに関しては他にも「MP 最大時に Flash」「リソースの追加消費で効果アップ」「敵へのトドメの一撃になれば CD 解消や MP 回復」などの特性があり、いずれもリソースマネジメントに関わってきます。
こうした特徴から、このゲームの戦闘では「今いちばん使うべきスキル」について、かなり考えさせられます。
さらに、Hype は“次”ターンの MP 回復量が上がるので、1 ターンキルしてしまうとその恩恵に預かれません。なので、あえて戦闘終了を少し遅らせるみたいな戦術を、毎回でないにせよ、たまに取りたくなることがあります。
しかし一方で、敵もけっこう強い攻撃をしてくるので、そんな悠長に戦っているわけにもいきません。3 ステージ目とかでもう、初手から全体攻撃でこっち全員の HP を半分くらい持っていくヤツとかいる。なので基本は 1 ターンキルを目指すし、たぶんこのゲームのザコ戦、決着までの平均ターン数は 1.5 ぐらいです。
じゃあどうするか。実は厳しい攻撃をしてくるばかりじゃなく、敵によっては 1 ターン目にのんびりバフだけするヤツなんかもいます。なので、そいつだけ残して MP 回復ターンを稼いだりとか、厄介でない敵が多い編成のときの戦闘は「エコラウンド」にするとか、そういった見極めも必要になってきます。
つまり、このゲームの戦闘では「今いちばん倒すべき敵」についても考慮が必要になります。
そして、各キャラクターは得手不得手がかなりハッキリしていて、常に敵の弱点をつけるとも限りません。それどころか、相手の得意属性で攻撃して Resist されてしまうと、逆に Hype を失ってしまいます。
なので、使いたいスキルも狙いたい敵もいるけど、全 12 種類の属性が必ずしもそれを簡単に許してくれるとは限らない。ときにはあえて敵の得意属性で無理やり倒しきるような選択も必要になってきます。
この、複雑ながらも多数の要素が絡み合って「今いちばんすべきこと」を考えさせられる戦闘が、本当に刺激的で楽しい。
もちろん、進めていくと自分なりの「型」のようなものがある程度できてきて、刺激は穏やかになっていきます。ですが、そういうのは構築する過程がまず楽しいし、うまく回っているところを見るのも楽しいし、このゲームの場合、敵の編成やステージの変化でも「型」の調整を余儀なくさせられるため、飽きさせません。
というか敵の種類自体がまず多いですからね。敵が 150 種類いる、という物量がここで効いてきます。
ゲーム全体のプログレッションもよくできています。
単にスキルの選択肢が増えていくだけではなくて、ある時点から「戦闘後に HP と MP を一部回復する」ことが可能になったり、そのあとも「戦闘間で Hype を持ち越す」能力を獲得できたりします。こうした要素によってメタ的に戦略性が変化していき、新たなセオリーを構築していく楽しみが途切れないようになっています。
ぼくはターン制戦闘の RPG が好きで、Steam でもよくターン制コンバットのタグから新作をあさったりしているんですが、このゲームの戦闘システムの満足度は、過去最高と言っても過言じゃないほどです。
[h2]キャラが魅力的[/h2]
まず見た目の話からしましょうか。
[h3]かわいい……かわいくない?[/h3]
いやたしかに MS ペイントみはあるんですけど、上手な絵ってわけでもないですけど、でもかわいくないですか? それによく見るとちゃんとドット打ってて、これはこういうスタイルなんですよね。
キャラデザも、亜人系のキャラが好きな人にはかなり刺さるデザインをしていると思います。w みたいな口とか黒目が好きな人にはクリティカルヒットだと思います。
刺さらなかった人も、コロコロ変わる各キャラの表情を見ていると、段々とどのキャラにも愛着が湧いていくはずです。というのも、表情差分が本当にすごい豊富なんですよ。なので、単語ちょっと拾えて会話の理解度 60% ぐらいでも、表情で言おうとしていることやテンションが分かって、ダイアログ読むのが楽しいんです。
表情差分、多いキャラだと 30 種類ぐらいあるんじゃないかな……たぶんゲーム中たった 1 度しか表示されない差分とかもあります。こういうとこ本当に作り込みが狂気的。
ちょっと興味あるなと思われた方は、[url=steamcommunity.com/sharedfiles/filedetails/?id=3252199686]日本語ガイド[/url]にキャラの表情差分をいくつか載せているので、ぜひご覧ください。
[h3]キャラの個性と感情描写[/h3]
そしてキャラの個性もいいんです。
このゲーム、いわゆる「使命を帯びた」タイプのキャラが存在しません。そういうお話ではないからです。仕事を辞めたい主人公が、事件や陰謀に巻き込まれたりして、目標を見出して前に進んでいくお話だからです。そして仲間たちとは、その過程で目的が一致したり、あるいはなし崩し的に同道するという、ゆるめの繋がりになっています。
何を言いたいかというと、このゲームのキャラクターたちの言動には「ストーリーの都合」が、あんまりないんですね。なので、目の前で起こった出来事に対しての意見や気持ちが自然で、生き生きとしていて、「そのキャラらしさ」をすごく感じられる。
登場するキャラクターはみんなステレオタイプの欠片もない個性派揃いなんですが、一方でちゃんと誰もに共感できて、その気持ちがわかります。役割を負わされていないから、枠に嵌めたり、不自然なほど尖らせる必要がないわけです。そういう自然さがたいへんよろしい。
で、ゲームとしても物語を進めるのと同じくらい、キャラクターの感情にフォーカスした作りになっています。キャラ描写が本当に濃くて、ちょっとしたことや親密度の違いでも違うセリフが用意されていたりして、作者がキャラクターを大事にしているのが伝わってくる。とにかくみんなよく喋ります。恋愛ゲーよろしく(と作中で突っ込まれることもある)好きな仲間キャラを選んでお話できたりとかもします。あとまあ、落ち込んだり、トラウマを引きずったりもします。
個人的に好きなのがこの負の感情の扱いで、物語の途中で何人かの仲間キャラが、ある種のつらい記憶を抱えることになるんですが、それをずーーーっと引きずるんですよ。鬱ゲーではないので、全体としてはそれほどネガティブには描かれないんですけど、決して忘れない。
よくあるのは、忘れてしまったかのようにパッと割り切ったり、逆に闇落ちしたり。フィクションだとそういう極端なケースが多くて、プロット圧かなーなんて感じちゃったりします。でも実際には、心の傷はそんな簡単には癒えないし、けれども痛みを感じながら人生は進んでいく。このゲームはそういうとこをしっかり描写してるので、キャラがちゃんとその世界で生きているって感じがするんですよね。
キャラを愛でるゲームと言っても過言ではないくらい、その魅力が丁寧に描写されているゲームです、Dyztopia は。ちなみにぼくはちょろいので Kiyota ちゃん推しです。かわいい。
[h2]字数が足りない[/h2]
Steam レビューの字数制限が見えてきてしまったので、書ききれない良いところ悪いところをざっくりまとめていきます。はい、ここまで褒めちぎってきましたけど、もちろん悪いとこもあります。
[h3]GOOD: ユニークな世界観とストーリー[/h3]
ストーリー全体のプロットは少しご都合主義的なところがありますが、世界観の設定が非常にユニークで魅力的に仕上がっており、決して退屈しない出来栄えになっています。あと何回も言うけどキャラの掛け合いがマジでいいです。
[h3]GOOD: 楽しいアイテムビルド[/h3]
キャラの方向性を変える、という意味でのビルドではなく、キャラの方向性を活かせるよう装備を組み合わせるのが一筋縄ではいかない、というタイプです。選択の幅が広く、「一番いいのを頼む」と言われても「簡単に言ってくれるねぇ!」と毒づきたくなるくらい組み合わせ甲斐があります。
[h3]GOOD: リプレイ性が高い[/h3]
ストーリーの大筋は基本変わりませんが、仲間キャラの誰と親交が深まっているかで展開が少し分岐したり、細かくセリフが変わったりします。キャラを愛せるゲームなので、この点が充実しているのはかなりリプレイ性に寄与しています。
また、クリア後コンテンツではチャレンジ要素のみならず、世界観により切り込む話があったり、絆が深まった仲間限定で強力な最終装備が拾えたりします。もちろん New Game+ もあります。JRPG としての周回の面白さはかなりある方だと思います。
[h3]BAD: つたないUI[/h3]
UI はぶっちゃけよくないです。気になるところを挙げると、
[list]
[*]ショップで装備品の着用前後の比較ができない
[*]一覧や売却画面で大量の防具、アクセ、シャードがまとめて表示されてつらい
[*]敵の HP や BP の残量が、ダメージを与えた際に短時間しか表示されない
[*]味方キャラについたバフ・デバフが最大 5 つまでしか表示されない
[*]敵の持つパッシブや付与されたバフ・デバフが一度に確認できなくてだるい
[*]スキル説明に書いてあるダメージ計算式が不正確で、使ってみるまで威力がわかりにくい
[/list]
なお、装備画面で方向キーの左右、または右下の情報欄をクリックすると表示が切り替わり、シャードのスキルや装備の特殊効果について詳細が表示されるようになります。これは絶対に覚えておくべき操作です。
[h3]BAD: 導入はうまくない[/h3]
ストーリーテリングという意味での導入はけっこういいし、難易度・習熟曲線も悪くないです。
ただ、ゲームとしての導入はうまくない。割と初手からいろんなゲームシステムをダイアログで伝えてこようとします。待ってくれたまえ、ことばの洪水をワッといっきにあびせかけるのは!
[h3]BAD: バグはちょこちょこある[/h3]
まあ個人製作のインディーゲーの宿命かもしれませんが、ちょっとしたバグや、キャラが一瞬不審な挙動をしたりなんかはたまにあります。ゲーム進行には問題ないです。
[h2]むすびに[/h2]
ぼくはこのゲームを Hidden Gem Discovery というキュレーター経由で知りました。このキュレーターが紹介するゲームは「まあ確かに、けっこういいじゃん」と思えるものが多いです。
でも「本物」を見つけたのは、これが初めてでした。人目につかないところで光り輝き続けている、紛れもない真正の宝石。それが Dyztopia です。
英語チョットデキルな JRPG 好きの方には、ぜひともプレイしてもらいたい作品です。
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