Milky Way Prince – The Vampire Star のレビュー
アプリID | 1302050 |
アプリの種類 | GAME |
開発者 | Eyeguys, Lorenzo Redaelli |
出版社 | Santa Ragione |
カテゴリー | シングルプレイヤー, Steamの実績, フルコントローラーサポート, Steam トレーディングカード |
ジャンル | インディー, アドベンチャー |
発売日 | 13 8月, 2020 |
プラットフォーム | Windows, Mac |
対応言語 | English, French, Italian, German, Spanish - Spain, Simplified Chinese, Traditional Chinese, Japanese, Russian |

33 総評
30 ポジティブなレビュー
3 否定的レビュー
ほとんど肯定的 スコア
Milky Way Prince – The Vampire Star は合計 33 件のレビューを獲得しており、そのうち 30 件が好評、3 件が不評です。総合スコアは「ほとんど肯定的」です。
レビューのグラフ
上記のグラフは、Milky Way Prince – The Vampire Star のフィードバックの傾向を示しており、新しいアップデートや機能が導入された際のプレイヤーの意見の変化を視覚的に表しています。このデータを通じて、ゲームの評価の推移を理解できます。
最新の Steam レビュー
このセクションでは、{name} の最新 10 件の Steam レビューを表示し、さまざまなプレイヤーの体験や感想を紹介します。各レビューの概要には、総プレイ時間、肯定的・否定的な反応の数が含まれており、コミュニティのフィードバックを明確に示しています。
プレイ時間:
158 分
物語は選択式で進行する。エンディングは3種類あり、今、どのルートを進んでいるのかは、ゲーム開始後のスタートメニューおよび主人公の部屋の左上のポスターから確かめることができる。一見すると訳の分からない記号の羅列のように見えるものがそれである。私は、多分、一番到達率が高そうなノーマルエンドをクリアした([spoiler] そういう意味では、私もスーンに呑み込まれ、主人公の自己暗示に従ってしまっていたのだろう[/spoiler] )。他のエンディングの回収もしたくないわけではないけれども、いかんせん、二周目、三周目などがゲームのシステム上、単純に苦痛にならざるを得ないため、そこまでのやり込みは断念した。ここがせめてもう少し気軽にできればなとは思う。
ゲームデザインの面はひたすらスタイリッシュで(セックス描写すらそうで、最初のそれとかあくまで精神的な交わりの表現をしてるのかと思ったくらいである)、何となくちょっと『輪るピングドラム』などのスタイリッシュさを私としては連想するものがあったし、実際、そういったものの影響を受けているという。本作では主に主人公であるナキの視点からスーンに寄り添おうとするものではあるのだけれど、その内面に立ち向かおうとするときの画面的な仕掛けがとにかく機械的でツルツルしていて、そういう、人間と向き合っているはずなのに絶対的に存在している「壁、境界」的なイメージがそうしたところからも窺い知れるようになっている。
とにかく主人公ナキからしてもひたすらこちらにその感情について説得力を持たせることが一切ないままに突っ走っているのを見せられるばかりで辟易としてくるが、故意にそういう描写になっていることはシナリオを理解すると分かってくるものではあるので、そこは我慢して進めてもらえると、なるほどなあと楽しめる物語になっているとは思う。私も正直言うと最初の5分で既に操作性も話し運びも無茶苦茶に感じてかなりだるく思ったし、会話も会話にならないし、なんなら終盤までそうだったけれど、とはいえ「そうである理由」が分からないわけではなかったので、ぐっと堪えてやるしかないとしか言えない。二人に抱くそのイラつき(と、ちょっと言ってること分かる感じ)は正しいものだ。本作をやるに関してはそうしたところに耐えられるか否かにかかっていると思う。
また、日本語翻訳についてだが、どうやら現状のものは上位互換されたバージョンになっているとはいうが、それでもかなりクセが強い翻訳文になっているので、最初のセーブポイントまで日本語版を試してみてから、なんだか合わないなと思ったら、途中からでも素直に原文に切り替えてプレーすることをお勧めする。本作は特に難しい英文が展開することもないので、辞書を引きながら読むことが億劫でさえなければ、比較的すらすらと読める程度のレベルでもある。支離滅裂でめちゃくちゃってほどひどいわけではないが、個人的にはこの翻訳文がかなり本作への印象で悪い影響を落としてしまっていたので(一種の印象操作だった)、あまりおすすめはしない。
ついでに、本作の理解のためにプレイ後にでも読むことをお勧めする記事を挙げておきます。
・『IGN Japan』-「恋愛、クィア、コロナ禍と向き合うこと——『ミルキーウェイ・プリンス』『メディテラネア・インフェルノ』クリエイターインタビュー(2023/08/20)」(https://jp.ign.com/milky-way-prince-the-vampire-star/69854/interview/)
・『note』-「『ミルキーウェイ・プリンス』3年越しの新訳版リリースについて(by翻訳者)(2023/07/19)」(https://note.com/piw/n/n31e7ab048df2)
[hr][/hr]
↓以下、内容に触れています。↓
本作には同性愛の要素があり、確かにそういうところが彼らにとって重要なポジションに位置してもいるのだけれど、あまりそんなゴリゴリにシナリオでだからどうのと押しつけてくるような作品ではない。世界には主人公ナキと、彼が運命的に出会ってしまうスーンの二人しかいないというほどひたすら二人の世界がサラサラとした時間経過と共に描かれていく。とにかくナキがのぼせ上がっていたり、スーンの[spoiler] 病み具合[/spoiler] が甚だしかったりと、実際に描かれる断片を通してこの世界に関わることになるプレーヤーとしては割と付いて行くのが難しいテンションで貫かれている。想像力によって補填しながら話を進められはするけれど、それが自然にできるというよりは無理やりそうすることで彼らの現状をそれなりに理解しながら進めるという感じなので、始終置いてけぼりを感じつつ、距離感が分からなくなりつつ最後まで行くことになる。そしてまあ、そうした距離感である必然性といったものはやっているうちに分かってくる要素でもある。だって[spoiler] それはまさにこの二人自身もそうである[/spoiler] のだから。彼らは恋愛をしている。けれど[spoiler] それは決して恋愛ではない。彼らは重なり合うことはない。お互いがそれぞれに抱いている影を分かち合うこともせず、できず、方法も分からないまま、会うたびに空しく体を重ねることしかできない。相手の中に勝手な理想を見ては失望し、ただ共依存関係を浅く深めていっては互いに精神的にも身体的にも自傷行為を重ねるしか能がないだけなのだ[/spoiler] 。そして二人は吸血鬼によって、怪物によって、この関係をぶち壊すしかなくなってしまう。トクベツだから、ダイスキだから[spoiler] 救わなければならない。いかにも後ろめたそうに振る舞いながらそう思わせて寄り掛かる相手を、自分を見つめなければならない[/spoiler] 。これはそういうゲームなのである。
👍 : 0 |
😃 : 1
肯定的
プレイ時間:
99 分
これはsteamのおすすめしますか?というような評価基準でのサムズアップではなく、破滅的な経験を一つの作品に落とし込んだ、その努力に対しての褒美としてのサムズアップです。
でも本音を言えば、後半はあまりにも抽象的で醒めてしまいました。精神がクラッシュしたような映像とセリフにくたびれてしまったのかも。何はともあれ、私はこんな面倒な恋人に出会ったらそのうち興味をなくして自然消滅するタイプの人間なのでしょう。
👍 : 2 |
😃 : 0
肯定的
プレイ時間:
211 分
この先どうなっていくのだろう?と最初はワクワクする。
しかし最終的には、物語とキャラクターの核になっている重要な設定に納得できなかった。
設定の開示が断片的であり唐突なので、「あなたがそう言うならそうなのだろう」という程度の受け取りになる。
自然と納得できるような描写が、もっと多くあればよかった。
👍 : 0 |
😃 : 0
否定的
プレイ時間:
167 分
蛾が画面いっぱいにたくさん出てくるシーンがあるので、集合体が苦手な人はやらないほうがいい。
グッドエンディングを見るまでは、「おすすめしない」だった。グッドエンディングでは共依存しない。ナキが自立しようとしていて、それに至るまでのナキの不安に共感できて、やっとこのゲームに意味を見出せた。
全体的に漠然としすぎているから関係性がわかりにくいし、セールのときに買ったけどそれでも個人的にはちょっと高いかな、と思うくらいだけどハマる人にはハマるだろうから重くて暗い、救いようがない人間が好きな人にはおすすめです。
👍 : 1 |
😃 : 1
肯定的
プレイ時間:
449 分
エンディング3種回収しました。
良かった点[list]
[*]SE・BGM:退廃的な雰囲気や不安定なシーンに合っていた。
[*]演出・デザイン:幾原邦彦(というか輪るピングドラム)そのままなんだけどスタイリッシュ&直感的でわかりやすい。[/list]
悪かった点[list]
[*]オートセーブしか無い&2倍速しか周回機能が無い:そんなに何回もプレイすることが想定されていないからスキップできないゆえのストーリーへの没入感を優先しているのかもしれない。でもせめて3倍速にしてほしい。[/list]
全体的な感想[list]
[*][spoiler]Chapter 5の発狂スーンのランダムな返事が日本語訳に捻りを感じて面白い。[/spoiler]
[*][spoiler]good endでそういう方向へ行くのは作者の体験を反映していて現実的だけど、これはフィクションだからgood endも乗り越えて二人がちゃんと適切な距離感で付き合っていけるtrue endが見たかった。[/spoiler]
[*][spoiler]スーン可愛いよスーン。でもナキも不安定で未熟な人間だから(5.6歳は歳離れてそうな印象を受けた)別の相手を探したほうがいいのは確かだと思う。[/spoiler][/list]
面白くて一気にプレイしたのでBL抵抗ない人にはお勧めです。というか男女だったらリアルすぎてゲームとして成り立たなさそうだからBLでファンタジックにしたのは正解ですね。
👍 : 1 |
😃 : 0
肯定的
プレイ時間:
92 分
ある日、流れ星と共に現れた素敵な男の子サーン(SUNE)と出会って恋に落ちたナキ(NUKI)。
ミステリアスなサーンの虜になっていくナキだったが、だんだん彼の言動がおかしなことになってきて……? というあらすじの恋愛ADVシム。
特徴的なのは平面的でパッキリとしたビジュアルと幻想と現実の境界が曖昧な世界観。
明確に幾原邦彦をリスペクトしており、冒頭に紹介される絵本風のおとぎ話はもろに『ウテナ』だし、エピソードごとに王子様化したサーンがテンプレ化した台詞を反復するのは『ピングドラム』だし、決め台詞の「STAR TRANSFER AGREED」は『ユリ熊嵐』(YURI APPROVED)? 百合じゃなくて薔薇だけど。
そうしたファンタスティックな演出で、サーンとナキの関係の発展と転落を描いていく。もちろん、尋常な恋愛ではない。
売り文句を信じるならば、境界性パーソナリティ障害の恋人と付き合っていたころの作者の経験が反映された半私小説的な物語らしい。
たとえば、途中でサーンが文字通り「怪物化」するくだりがある。これは作者が元恋人から受けたハラスメントが元となっているのだろう。そのときの肌感覚を非現実的な演出でカリカチュアライズすることで、本作は「ポップなおとぎ話」として幾分か他者にとって飲み込みやすいものとなった。
まあ、たしかにひたすら陰惨なだけの他人の恋愛物語をただ写しとったゲームなんて、一ユーザーとしてあまりやりたくはない。
容易には言語化しえないであろう自らの経験をひろく共有し、エンタメに落とし込む術策としては正解だろう。
ただ、コンセプトにアイディアやクオリティがついていっているとは言いがたい。
正直の幾原ライクな演出には”劣化版”以上の評価を与えられないし、なによりキャラクターやストーリーテリングへ有機的につながっているとは言いがたい。単にストレスフルな状況な置かれて精神が不安定になった人が見る幻覚でしかなくて、そういうものが世界そのものに干渉するんですよといわれても、はあ、えろう大変ですなあ、としかおもわれない。結局は、他人事なのだ。どうでもいい感じの主人公が頭のおかしいどうでもいいやつと恋に落ちて、どうでもいい感じで破局しようがどうでもいい。
最近ではメンタルヘルスに関するあれこれを取り入れるゲームも増えてきたが、本作はそのなかでもあまりの出来のいいほうとは言えない。
あくまで個人の私小説として受容するのが正解で、それ以上のもの、たとえば深みのあるストーリーだとか斬新なビジュアルワークだとか没入感だとかを期待すると失望するはめになる。
あと翻訳。
[strike]すでに結構言われているところではあるが、邦訳がひどい。[/strike]
[strike]最初は「なんかノリが軽いな~」くらいの印象だったが、原文と比較するともはや改竄レベルだとわかる。[/strike]
[strike]透明な翻訳ばかりがかならずしも翻訳ではないのだが、せめて作品のトーンくらいは伝える努力をしてほしい。[/strike]
[2023年7月追記]
新作の発売に合わせて翻訳が改善されたらしい。(参考記事:https://jp.ign.com/mediteranea-inferono/68162/news/milky-way-prince-the-vampire-star-3)
サムズダウンしたのは主に内容に対する不満によるものなので、現時点で評価を変えることはないのだけれど、しかし翻訳の良し悪しや味付けが作品の受け取り方に影響することは大いにあり得るわけで、気が向けばそのうち再プレイしてまた考えるかもしれない。
というか、二年半経って自分のレビュー読み返すと「なんでこの人こんなキレてんの? 怖っ」っておもった。たぶん、なにか厭なことでもあったんでしょう。よくおぼえてないけれど。
👍 : 13 |
😃 : 1
否定的
プレイ時間:
210 分
[h1]恋のぬかるみの中できみに見た天の川のこと[/h1]
流れ星のように素敵なひととの出会いを夢見る青年と、魅力的で謎めいて不安定で爆発寸前の激変型変光星(Vampire Star)のような青年ふたりの、不穏でピュアであまりに危うい恋と破綻とその先の物語。
一周1時間程度、メインエンディングは2種。
恋愛をテーマにしたノベルゲームではあるけれど、ウテナなどを彷彿とさせる幾原作品などから引用される抽象的で奇抜な演出や、時にリアルで時に生々しい選択肢がプレイしていて飽きさせず、風変わりなゲームとして楽しめます。
なにより演出・テキストを通して、そんな経験がまるでなくても精神が不安定な相手との恋愛にハマりこみ、傷つき傷つけられる一端をリアルに体感できます。すごい。
コントローラを握って不安定な恋人と対峙しなければならない緊張感は他のノベルゲームで味わったことがなく、インタラクティブなノベルゲームとしてとても楽しかったです!
ふたつのエンディングも、単なるグッド・バッドではなくそれぞれの苦さがあって、プレイしてよかったなと思えるものです。気に入ったら、ぜひ両エンディングを見てください。
ただしリプレイ性は悪く、グッドエンドの条件がやたら厳しいわりに、既読スキップや各チャプターからのリプレイもできません。一周目クリア後に開放される倍速モードを使用してください。
2023年7月に作品意図の反映が不十分な旧翻訳に代わり、ラブムー氏による新翻訳に差し替えられました。テキストが重要な作品ですが、新翻訳では違和感なくこの独特で不安定な作品世界に入り込むことができます。
なお、メンタルが不安定な方との関係性で深く傷ついたことがある方は、プレイ前に注意書きを読んでください。明滅の激しい表現もあるので、苦手な方はご注意を。
一風変わったノベルゲームが好きな方、辛い失恋を経験した方、恋愛に興味がある方ない方どちらにもおすすめです。
[b]【グッドエンディングへの行き方】[/b]
より多くの人にグッドエンドを見てもらいたいので、他ガイド等を参考にヒントを記載します。
これ以外の選択肢でもたどり着けるかもしれませんが取り急ぎ。
①基本的に、愛情深い恋人として振る舞う。
②交感システムを成功させる(以下は選択肢の一例)
[list]
[*]Chapter1 好きに選ぶ ※おそらく失敗確定
[*]Chapter2 鼻→手→(深呼吸をする)→舌→(噛まない) ※香水使うといいかも(未検証)
[*]Chapter3 手→舌→目
[*]Chapter4 手→(尋ねる)→(わかった…)→目→(尋ねる)→(わかった…)→舌
[/list]
③Chapter5の会話シーン
[list]
[*]会話を織り交ぜつつ、ジェイドストーンを3回使う。
[*][spoiler]|もうイヤだ!|[/spoiler]を選択
[*]その後、[spoiler]「こんなはずじゃなかった」[/spoiler]を3回選択すればルート確定です。[spoiler]「約束した」[/spoiler]という台詞しか出てこない場合はリセットしてください。
[/list]
👍 : 15 |
😃 : 0
肯定的
プレイ時間:
2518 分
[h1]2023年7月19日、新訳版アップデートされました[/h1]
リリース時の翻訳や原文でプレイされた方はおそらく感じられたことと思いますが、本作、リリース時は"機械翻訳み"によってかなり不評の声が上がっていました。そうしたこともあって、このたび、不肖自分が公式翻訳(改訳)させて頂きました。
原文からなるべくナキとスーンの「リアルな声」が響くことを意識して訳しました(作者に時おりメールで質問しながら、半年かけて自分なりに頑張って訳しました)。作者・ロレンツォ・レダエリ氏が人生を賭して作り上げた作品であることがきっと伝わることと思います(伝わりますように!)。ナキとスーンの「物語」をより深く感じて頂けると訳者冥利に尽きます。
[b]【マルチエンディングについて】[/b]
本作はふたつのエンディングが用意されています(厳密には3つ)。ひとつは「グッドエンド」(とは言え、いわゆるハッピーエンドではない)、もうひとつは「バッドエンド」とも呼ぶべきエンディングです。どちらかが正解ということはないはずですが、どちらのエンディングもとても心を打つものなので、ぜひ両方に到達して頂きたいです。
グッドエンドとバッドエンドは、[spoiler] 交感システムの成功回数とチャプター5でのスーンに対する対応で決まります(ヒント・時には思いきって、彼に向って「ノー」を投げかけることも必要です)。[/spoiler]
👍 : 18 |
😃 : 0
肯定的
プレイ時間:
1318 分
[h1] オリジナルの内容はオススメ、日本語版はオススメできません(※現在は修正されています) [/h1]
[b](追記:2023年7月現在は新訳版が公開されています。このレビューは以前の日本語版に関する内容になります。翻訳の内容に触れている他のレビューも含め、旧日本語版に対する感想であることがわかりやすくなるようこのレビューはそのまま残します。)[/b]
発売直後にプレイしたものの、日本語未対応のノベルゲームに日本語のレビューを書いてもあまり参考にならないと思い放置していましたが、アップデートで対応したとのことで再プレイしました。
幻想的なメタファーを使ったキャラクターの表現や抽象的でスタイリッシュな演出に特徴があり、ゲームの制作そのものが強烈な体験を振り返り立ち直ろうとする作者の自分自身へのカウンセリングのようになっているところが面白く、短いながらも印象的な作品です。
日本語対応を機に広く目に留まってほしかったのですが、シナリオの翻訳に関して質が良いとは言い難く、オリジナル(英語版)とは違う内容に改変しているとみられる箇所も見つけたので、日本語でオリジナルと遜色のないテキストを読みたい人にはオススメできません。
日本語版の品質に対する評価がオリジナルに対するものと混ざってしまうのは良いことではないと思ったので、日本語のみでプレイすることを考えている人の参考になるよう日本語版の良くないと思ったところを序盤から抜粋した一部のみですが書いておきます。
日本語版の良くないところ
[b] ノリが異様に軽い、原文にない「~」の多用 [/b]
モノローグと会話文だけで構成されたシナリオのため、ノリが軽いこと自体は好き嫌いの範疇かもしれませんが、文末に「~」がつく気の抜けた印象の翻訳になっている箇所が多いです。
例:
原文「Hold on.」
↓
翻訳「待ってろ~今行くからなぁ」
原文「I really can understand you.」
↓
翻訳「俺はその気持ち結構解るな~」
[b] 機械翻訳のような不自然な決め台詞 [/b]
SuneがMilky Way Princeの服装で現れる印象的なシーンを締めくくる「STAR TRANSFER AGREED.」というセリフが「スター転送同意。」になっています。
完全な造語なので翻訳が難しいとは思いますが、単語単位では訳として正確であっても日本語に慣れている人からすると極めて不自然に感じる、機械翻訳したような表現になっていると読んだ時の印象が変わってしまうと思いました。
[b] 単純な誤訳、内容の抜け [/b]
「ヒトデは体を再生させることができて、人間にもそんな能力があればいいのにと思う」という話で
原文「We wouldn't be so afraid of each other; to hurt each other and to help eacch other.(直訳:(人間に再生能力があれば)我々はお互いにそれほど恐れを抱かなくなるはずです。お互いを傷つけ合うことも、助け合うことも。)」
↓
翻訳「そしたらさ、互いを恐れず、傷つけず、助け合えると思うんだ。」
と「お互いを傷つけることを恐れなくなる」が「お互いを傷つけることがなくなる」で真逆の意味になっています。
また、偶然の出会いからしばらくして別の場所で会う約束をするという状況で
原文「Let's meet at 10pm at the old colonnade \(*^▽^*)/」
↓
翻訳「10時に会おうよ。前のとこ集合で。」
となっているところなどは「the old colonnade(古い柱廊)」が「前のとこ」に変わっていて、「前のとこ」という表現自体も状況に合っていないので明らかな誤訳であり、理由はわかりませんが文末についていた顔文字もなくなっています。
[b] 内容の改変、付け足し [/b]
"slay" "b**ch" "tuck"(Steamでは罵倒語とみなされたものは伏せ字になるので対策に一部を隠しています)などのドラァグ(女装パフォーマンス)を含むゲイカルチャーと繋がりのあるスラングは正確に日本語に反映させることは難しいかもしれませんが、セリフの内容自体が変わってしまっています。
また、原文のスラングが反映されない一方でパロディや引用の意図がない原文やスラングが入っていない原文ににパロディやスラングが入っている箇所もありました。
例:
原文「"SLAAAAAAAY B**CH!"」( 「アンタここでキメなきゃ脱落よ”Slay b**ch or You get eliminated”」の略「絶対にキメるのよ」と思われるゲイ的な表現)
↓
翻訳「『変な発言させんなよな!』」
原文「Damn, she's so beautiful.」「A tucked princess.」(tuckingと呼ばれる股間に膨らみが出ないように固定する技術を使った女装の男性の美しさを2人で褒めている)
↓
翻訳「…凄いコスプレだったね。」「貸切状態の理由がわかったろ。」
原文「My mind was flying so high.」
↓
翻訳「これが『最高にハイってやつ』なのかな。」
[b] セミコロンがそのまま [/b]
日本語にはセミコロンがないので訳した時点で無くなるはずなのですが、そのまま残っているせいで誤字や衍字のように見えます。
最後に繰り返しますが、オリジナルの内容は良いものです。上で挙げた例を深刻なものとして捉えるかは人によって違うと思いますが、「~」の多用や「スター転送同意。」に関しては翻訳によって作品の印象が損なわれていると感じたので、改善されることを願っています。
👍 : 65 |
😃 : 1
肯定的