Tenshu General のレビュー

どうやら17世紀であるらしい時代を舞台に、あつこ藩やひろし藩といった架空のサムライクランが、エンペラーの勅を受けて架空の新天地の覇権を競う…という申し訳程度の和風フレーバーが添えられたカジュアルRTS。 いわゆるRISK系ボードゲームのルールをリアルタイムに落とし込んだ作品で、遊び心地はだいたいRISKだと思って差し支えない。ただし配置できる軍団は最大4ユニットまでという制約があるため、直接衝突よりもお互い無防備な土地を盗り合う展開になりやすい設計。 ゲームとしての出来は及第点といったところで、とりあえず1時間くらいは楽しめる。甘めに採点するならおすすめの方につけてもよかったかもしれない。しかし悲しいかな、このタイプのゲームは世にありふれている。 確かにシンプルでとっつきやすいところは美点だが、シンプルさを極めた路線なら「Galcon」シリーズという完成形が既に存在する。マップの多彩さを求めるなら（ターン制だが）「Lux Delux」には敵わない。さらに言えば元ネタの「RISK」もSteamでリメイクされている。これらライバルと競えるだけの個性がTenshu Generalにあるか？と問われると、正直あるとは答えづらい。 駆け引きをもたらすべく導入された兵科や地形などのルールも、うまく機能しているとは言い難い。これらが戦闘に与える修正値はわずかだし、中盤以降は結局Max兵力ユニット同士の鬼ごっこに終始しがちなので影響がなくなってしまう。一方内政との関係も「地形に合ったものから順に選ばないと損をする」というペナルティ要素でしかなく、プレイの幅を広げる役目は果たしていない。 なおマルチ未対応である点も留意のこと。個人的にはシングルプレイが充実していれば十分なのでここは減点ポイントにはしないが（あってもどうせ過疎るだろうし…）、残念ながらそのシングルモードもいまひとつである。 一応キャンペーンは用意されているものの、あつこやひろしにストーリーを期待できるわけもなく、内容的にもスカーミッシュと一緒なので無味乾燥なことこの上ない。最初の陣営をラストマップまでクリアしたら（1時間程度）もう「このゲームは一通り遊びつくしたかな」という気分になってしまう。 総合的に言って「失敗作ではないのだが、勧めるほどの魅力もない凡作」という評価にとどまる。 システムもフレーバーも無難に万人向けにまとめようと試みた結果、すべてが無味乾燥に仕上がってしまった感。少々欠点があってもどこか突出した個性が感じられればもっと点数を上げたのだが…。