BLACK SHEEP TOWN のレビュー

何と言えばいいのかはわからないけれども 大事にとっておこうと思います 形式的には群青劇になるのでしょうが 著者を含めた製作者の人柄が随所に現れていて それが自然なものとして受け入れています 最後にレビューを投稿する際に他の人に勧めますかと出て来て 少し言葉に詰まるような感覚を抱きましたが 物語は作り手と読み手の両方が揃って一つの作品であり混沌の街が舞台でもあるので 他の人に勧めることにします

2024年、最大の衝撃を受けたタイトル。発売は2022年9月だが、私が触れたのは2024年5月。短くしかし強烈なインパクトあるPVに出会ったのがきっかけだった。 「BLACK SHEEP TOWN」は、膨大な文章量と濃密な描写で成立する群像劇である。マフィアの跋扈するアンダーグラウンド、その中の無数の勢力における協調と対立が淡々と、しかし重厚に描かれていく。多数の人物の視点と思惑とが重なり合って映し出される舞台は、個々の登場人物たちにも他に類を見ない魅力を纏わせている。 物語を彩る個性的な人物たちが登場するが、彼らはみな多かれ少なかれこの世界の洗礼を容赦なく受けることになる。どんなに突出した暴力も権力も知力も超能力も、数ある個性のうちの一つに過ぎない。生まれ持った才能や環境、積み上げた努力も培った信頼も生命ですらも、人が所有するものは何もかも、いつだって失われうるのだと突きつけられる。 本作では人の死も数多く描かれている。その死に様の多くは突然で理不尽であるが、しかし一方では説得力にあふれてもいる。ある人がそこで死ぬということは、生ききったということでもある、と納得できてしまう力強さがある。自分は死ぬまでに何を目指したらよいのか、この町で自分ならどう生きることができただろうか、とありきたりではあるが自分自身を振り返る材料にもなった。素晴らしい出会いに感謝している。