The Sekimeiya: Spun Glass のレビュー

傑作。『The Sekimeiya: Spun Glass』はミステリービジュアルノベルゲームです。 プレイ時間40時間～∞（これは思考時間を含む）という大作でありながら物語の大半が謎・事件・調査・推理といった要素へと還元され、非常に人を選びます。 エンタメ性や人間ドラマといったものは薄く、人によってはストーリーは無機質に、登場人物たちは駒のように感じられるかもしれません。しかし、あなたがミステリーやパズラーを愛しているのであれば、これ以上にない体験を味わえることでしょう。五年もの歳月をかけ作られた本作は細部まで緻密に作り込まれた結晶のような作品です。海外でも高い評価を獲得しており、人によってはATB級の作品にもなり得ます。 ただ残念なことに現状日本語訳はありません……ですが、Ren'pyというビジュアルノベルエンジンを使用しているため、翻訳ツールを使用し機械翻訳で読むことが出来ます。（参考までに私は翻訳ツールとしてVNTranslatorNeoを使用しました。導入は簡単です） 機械翻訳を使ってわざわざ読むなんて……と思っているかもしれませんが、プレイ感は通常のVNとさほど変わりありません。誤訳などは適宜対応すれば問題ない程度です。何よりSekimeiyaは非常に優れたミステリー作品です。現状日本語訳が出る見込みはないため、機械翻訳でも読む価値は大いにあるでしょう。 閉鎖環境・極限状況・数多くの謎・SFギミックといった要素を含む本作はinfinityシリーズや極限脱出（ZERO ESCAPE）シリーズといった名作群を想起させます。これらのシリーズファンには文句なしにオススメしたいです。特に本作はいくつかの面においてはそれらをも超えています。Sekimeiyaを端的に表現するのであれば『超複雑SFパズラー』です。次から次へと繰り出される膨大な数の謎と細部まで緻密に考え抜かれた複雑なパズルストーリーが本作の魅力です。物語全体を通した謎の数は尋常じゃないくらいに多く（少なくとも100以上はあります）理解不能故に惹きつけて止まない魅力的な謎が数多くあります。さらに、登場人物たちによって幾度も推理の応酬が繰り広げられ、プレイヤーの脳は混乱と快楽で満たされます。まさに謎の迷宮。謎に翻弄される喜びがここにあるのです。 そして最終章は圧巻。これらの膨大な謎が一つ一つ丁寧に紐解かれていきます。ここで一部を除くほとんどの謎がここで明かされます。ゲームを終えたときにはきっと細部まで緻密に作られたパズルストーリーに脱帽するに違いありません。また、最終章ではプレイヤーにも推理を求められます。謎に挑めば挑む程、本作の体験はより優れたものになり得ます。ぜひ、紙とペンを持って挑んでみてください。バッグログ、MAP、あらすじ、検索といった各種機能も充実しています。（といっても英語ですが） Sekimeiyaはとても複雑なミステリーで私自身もまだまだ理解しきれていないことが多いのですが、本作は至高の体験でした。今年プレイした中でのベストで大好きな作品です。いつか日本でも評価され、日本語訳が出ることを待ち望んでいます。 興味をもった方はぜひプレイしてみてください！ (ちなみに私のプレイ時間は100時間を超えていますが放置していた時間も含んでいるので大凡50~70時間だと思います)