School Years のレビュー

教室で迷子を楽しむゲーム

　この作品がビジュアルノベルに対して投げかける教訓は、「[b]鮮烈過ぎるCGの使用は時にストーリーの曲解を招く[/b]」である（無論、CGの力で意図的に曲解させる手法も存在するが）。 　（フォルダを精査しても、青苹果以外のED及びやり直し展開を示唆する「あなたが望む第一章」本体は存在しないので、現行版で別の筋は存在しないものとして話を進める。） 　この作品の主人公は「二人とも北京・精華に合格し、2008年鳥の巣で五輪を見よう」とうわ言のように繰り返す。それが家庭事情も不安定な彼にとって不可欠な動機付けだからだ。 　しかしこれは木子にとっては実現性の低い、迷惑な申し出である。 　第35話で「鳥の巣の下で愛を確かめる鮮烈なCG」が表示されたとしても、[b]木子が確かに同意していたことを意味しない[/b]し、[b]主人公の精神が常に正常であったことも保証しない[/b]。 　さて、フォルダを漁ると「[spoiler]もし君が僕を受け入れていたら[/spoiler]」という小品txtファイルが出てくる。「[spoiler]君が僕を受け入れていたら、とっくに別れていたでしょう、何しろ、僕の君への好意は衝動的なものだったのですから[/spoiler]」と始まる。 　これがシリーズ全体の構想だとすると、第36話以降の展開は（舌足らずで曲解を生む余地を残してしまったが）極めて正当である。 さて、良い点悪い点については、良い点しかない。 　良い点 １：メインの会話音と背景の会話音の同時再生、疑似3D効果の使用など、機能面の充実。 ２：（曲解の原因となるほど）北京五輪へと邁進する国家的盛り上がりと、上手く絡められている点。 ３：校舎という形を成した心の迷宮との往復が、効果的に使われている点（時に迷宮脱出の条件が過酷過ぎるが）。 ４：（上記の舌足らずさを除けば）木子との恋愛を描こうという努力が十二分に認められる点。 　悪い点 　主人公・雨喬・木子のあらゆる不可解さは、全て先に触れた「あなたが望む第一章」に絡むため、「現状では不可解」に留まる。