Neyasnoe のレビュー

Хорошо

walking depressive breakcore simulator

『トレインスポッティング』や『限りなく透明に近いブルー』など、 この世には行き詰った日常でドラッグや酒で時間を潰す以外に なにもできない若い時期を送るフィクションの名作が存在するが、 そのゲーム版が最近誕生した。それが『Neyasnoe』である。 ここには20代の作者Sad 3dの目に見える日常、心に映る感情がウォーキングシミュレーターの形で存在している。 本当にこのゲームは何もできない。酒を飲んで酩酊しながら路上を這いまわるネズミを見つめるとか、 高い建物の屋根に上がり遠くのネオンサインを見つめながらタバコを吸うようなことしかできない。 未来なんて見えない、今しか見えていない日常だ。 にも関わらずゲームプレイしている瞬間はどのアクションですらも 奇妙な詩情を抱えているかに感じる。 実際、本作は詩人と共に開発されたゲームということもあり、 あらゆる風景も体験も、心のなかで一歩離れた位置でフォーカスしながら 作っているがために、どこか乾いた情感が漂うのである。 他言語のレビューで「これがオープンワールドで100時間遊べればいいのに」という 本気とも冗談ともつかないテキストがあったが、わからなくもない。 他にない、どうしようもない青春がある種の美しさに反転した体験は本作にしかないからだ。