I Did Not Buy This Ticket のレビュー

夜から夜へ、葬式から葬式へ、奇妙なバスで旅する泣き屋の物語。 一周目クリアに1時間半程度、実績残り4つまで既読スキップ使って8時間程度のボリューム。 ビジュアルノベル好きの、ビジュアルノベル好きによる、ビジュアルノベル好きのための、ビジュアルノベルです。 ストアページのトレイラーとスチルからわかる通り、コラージュを多用したグラフィックが独特で、 ちょっとした笑いと、深い悲しみと、謎に満ちた奇妙な世界観を彩っています。 発生するイベントや、不思議な乗客たちとの会話もまたシュールな面がありますが、 プレイしていくと徐々に主人公の秘密が明らかになり…という王道のストーリー展開。 プロット自体の仕掛けや意外さというより、このように物語るということの面白さに満ちた、 まさにゲームのナラティブを活かした作品と言えるでしょう。 選択肢が多く、しかも細かい分岐が結構あります。 実績数は30、そのうち15でギャラリーに特別なスチルが解放されます。 このスチルもコラージュを駆使したものですが、一枚一枚が凝っていて集めたくなる魅力があります。 集めるのはちょっと大変ですが、発生するイベントはどれも面白いです。 また、一周で謎を全て解き明かせるような作りではなく、周回して異なる選択肢を選びながら、 徐々に謎を紐解いていけるようになっているため、あまり苦ではありませんでした。 音楽もまた、BGMとして派手すぎないながら、ゲームの雰囲気をうまく作り、 それでいて耳に残る独特のフレーズや音像があります。 ビジュアルノベル職人が、ビジュアルノベルファンのために作った作品と言えるでしょう。 ビジュアルノベル好きなら間違いなく買いですし、そうでない方もストアページの情報に惹かれたなら、 上質な王道ビジュアルノベルを味わえると思います。