Mediterranea Inferno のレビュー
幼なじみ3人の中に潜む悪魔を探検する夏の逃避行。彼らの秘密、恐怖、執着を解き明かし、絆を取り戻し、自分自身を再発見する手助けをしよう。『ミルキーウェイ・プリンス〜ヴァンパイア・スター〜』のクリエイターが贈る、よく熟れた、そして不穏なビジュアルノベル。
アプリID | 2103680 |
アプリの種類 | GAME |
開発者 | Eyeguys, Lorenzo Redaelli |
出版社 | Santa Ragione |
カテゴリー | シングルプレイヤー, Steamの実績, フルコントローラーサポート |
ジャンル | アドベンチャー |
発売日 | 24 8月, 2023 |
プラットフォーム | Windows, Mac |
対応言語 | English, French, Italian, German, Spanish - Spain, Simplified Chinese, Japanese |

431 総評
356 ポジティブなレビュー
75 否定的レビュー
ほとんど肯定的 スコア
Mediterranea Inferno は合計 431 件のレビューを獲得しており、そのうち 356 件が好評、75 件が不評です。総合スコアは「ほとんど肯定的」です。
レビューのグラフ
上記のグラフは、Mediterranea Inferno のフィードバックの傾向を示しており、新しいアップデートや機能が導入された際のプレイヤーの意見の変化を視覚的に表しています。このデータを通じて、ゲームの評価の推移を理解できます。
最新の Steam レビュー
このセクションでは、{name} の最新 10 件の Steam レビューを表示し、さまざまなプレイヤーの体験や感想を紹介します。各レビューの概要には、総プレイ時間、肯定的・否定的な反応の数が含まれており、コミュニティのフィードバックを明確に示しています。
プレイ時間:
369 分
システム:基本的には選択式ノベルゲームと言えるもの。TRUEエンドまでやるなら3周くらいはする必要があるのだけれども、この周回は1周目が終わると同時にあんまり負担感は感じなくなるようになっていると思う。少なくとも個人的にはずっとそこは楽しんでやれた。
グラフィック:基本的にはイラストがベースなのだけれども、グラフィックと3Dも活用されている。とにかくスタイリッシュに画面を構成していて、それが「ゲーム体験」としてプレイヤーを作品世界に没入させるものとなっている。この辺りのセンスが個人的にはかなり好みだった。日本の作品で何となく例として挙げるものがあるとしたら、アニメ『輪るピングドラム』の雰囲気が近しいかもしれない。作者の前作の『ミルキーウェイ・プリンス』よりもさらにこちらの意識を侵食してくる感じになっていた。
あらすじ:イタリアはミラノで、人気のある三人組として持てはやされていた若者たちがいた。彼らは『太陽の子供たち』と呼ばれ、輝きの中で存在していた。だが、コロナのパンデミックがこの彼らにも2年間の間断を平等に与えることとなる。25歳。四半世紀の危機へとそのまま雪崩れ込むことになってしまった、「若さ」の盛りにただただ焦燥をも覚える歳になった彼らは、南イタリアの避暑地で三日間だけの夏のバカンスを共に過ごすことにする。だが、2年ぶりに再会した彼らはただぎくしゃくとしたものを互いに感じながら、自らの中にある鬱屈として出口のない悩みと向き合うことからどうしても逃げられないのだった。現実から逃避するためのバカンス。折しも時は8月15日のFerragostoという休息日でもある。現実から逸脱し、逃避しようと、救いの出口を見出そうと、ここで彼らは足掻こうとする。聖母マリアに縋るように──。彼らの現実はどうなるのか。
+++
感想:『ミルキーウェイ・プリンス』は既に前にプレイしていた。あの作品もだいぶ要所要所で距離を詰めては心に矢を刺してきたのだけれども、とはいえ、結構、プレイヤーと作品の間に距離感は保ったまま楽しめるものでもあったのと、こちらは何となく作品解説やサンプルの雰囲気からパリパリしてそうな感じがしたのでめちゃくちゃ油断していたのだけれども、どっこいもどっこい、徹頭徹尾こっちをもゼロ距離マシンガンで穴だらけにしてくる超絶ヘビーな作品でした。大変好みです。ありがとうございます。こちらは作品とプレイヤーの距離をほぼゼロまで詰めてくるところがあります。容赦がない。よほど何も考えていないか、よほど幸福かとかではない限り、ほとんどの人の心にがっつり鋭い爪でひっかき傷を作っていく作品なのではないかと思います。
三人それぞれのEDとTRUEエンド、ミラージュを一切接種しないと見られるENDの全てのENDをプレイしてこの作品世界が語るものが一つのものとして完成するようになっている構成の巧みさもすごく好き。
イタリアという地が現在持っている呪いとも言える膠着状態、個人の中にある他人との埋められない距離感への焦り、各々が抱えている命題の呪縛化、現代社会が持つ病、繋がりたいのに繋がれない、繋がりたくないのに繋がりたい、「若さ」という曖昧且つ確実なものの果てに近付いて見える絶望感。本作はいわゆるLGBTQ要素も強く織り込まれていてここも外せない要素を構成してもいるのだけれども、だからといってその「ちっちゃなゲイコミュニティー(※作中で彼らがそう揶揄される場面がある)」に収まりきるはずもないもの(そして言ってしまえばそういうものに収まるしかないもの)を本作ではどうしようもなくあぶり出していた。主人公たちと一緒にこちらもずっと地獄を歩かされる。そしてその地獄はTRUEエンドまでやろうとも分かりやすい解放へと逃がさせてくれることもないし、そうなるはずもない。いっそ閉じてしまうか、現実を生き延びていってしまうか。大抵の場合、そうするしかないのだ。
彼らは各々に「ミラージュ」という実を通して彼らの願望を夢見ては、自分が抱える闇を覗く。「QUESTA È LA VIA DELL'AMORE」と言って誘われるその世界はつまるところ彼らの願望を達成するための夢想でありながら、実際には何らの解決手段を示唆さえしてくれないものである。だから自分を適度に気持ち良くさせてくれるかもしれないものでしかない。というか、大抵の場合はバッドトリップでしかない。ミラージュの幻想のクライマックスは自慰の暗喩で表現されているように、そういうものなのだ。彼らはそんな実を自分たちの中で奪い合うように誘われる。幸せになりたいなら、現実の鬱屈から逃れたいならと。つまりはその闘争をするなら、彼らはどうしたってエゴイズムを発揮するしかなくなってしまうということでもあって、その結果、勝者がどうなるかなんていうのは、作中でもそう表現されるように、自分の夢想に妥協せず、妥協してこの世界に生き延びることを選ばなかった「殉教者」になるしかないのである。この世界は誰かが死ぬことで変わるものがあるはずだからという勝手を押し付けられる形で。
TRUEエンドだと、[spoiler]マダマさんが特別な実を食べる[/spoiler]ということになるのもすごく面白かった。この自慰的行動を彼は他人の犠牲の上に得るし、何となく話をまとめて(でも、彼の言い分もそこまでズレていたわけでもないと思うところがまた救いがない)自慰的に自分がかつてはできなかった犠牲者になろうとするし、しかもそれを「キャンセル」されるのだもの。この身勝手さの窮まりとそれをポイっと捨てるところが、作品を通して見てきた主人公たちの鬱屈に或る種の穴を空けてもくれているのだけれど、決してだからといってハッピーエンドというわけでもなく、どうしようもない現実は続いていく感じがまた余韻として素晴らしかった。
三人が特別何かこう悪かったからこうなったんだということもなく(※人殺しを肯定しているのではない)、彼らはあくまで自分を取り巻く社会に巻きこまれて地獄に落ちたまま延々とそこに居続けるしかなくなっているというのがまずもって救いがなく。
その地獄から何度でも這い上がり続ける祖先というものが配置されているのも作品の妙だなあと思う。[spoiler]それが井戸の底に突き落とされているのも皮肉というか、やはり地獄というか。[/spoiler]
👍 : 3 |
😃 : 0
肯定的