Lay a Beauty to Rest: The Darkness Peach Blossom Spring のレビュー

「明末千里行」（飢えた子羊）をきっかけに本作も遊んでみました。2025年4月現在、日本語版が出ていないため翻訳ツールを用いるか英語・中国語どちらかの言語で読むしかありません。読書体験において文章・文体はとても重要な要素であり、おそらく私は本作を十全に味わえたわけではない。それでも言語の壁を乗り越えて真のエンディングに到達すれば、ほとんどのプレーヤーにとって素晴らしい体験になると思います。世界中の人々がより物語を深く楽しめるよう、日本語も含め多くの言語に対応したローカライズ（音声は中国語でも全く問題ない）がなされることを期待します。 以下、雑駁な印象を述べます。多少のネタバレを含むので、避けたい方はご注意を。 「明末千里行」と比べると、冒頭から中盤にかけて、読者を物語に没入させる力が弱く、登場人物のキャラクター性もやや類型的です。また多くのレビュアーが指摘している通り、展開される物語のレベルに比して、アートスタイルが美少女ゲームにやや寄りすぎている気がします。「明末千里行」においてはこれらの点は多かれ少なかれ改善されており、作品の完成度という面ではやはり後続の「明末千里行」が優っていると思います。 しかし本作における、同一人物のなかに昼と夜、美と醜、善と悪が存在するという描写、そして生と死とは分かちがたいという思想には強固な魅力と真実性があります。作中のいくつかのモチーフやイメージには宮崎駿の影響を強く感じますが（中文ウィキにも記載がある）、そういった先行の作品から抽出された要素と、中国の文化や伝統を巧みに融合させ、独自の世界観を提示することに成功していると感じます。個人的には、最近日本で作られているジブリ調のアニメ作品よりも、むしろ宮崎作品をはじめとする20世紀後半の日本アニメが有していた抒情性を豊かに受け継いでいる印象を受けました（追記：このことは嵇零氏が標榜している「民衆史観」とおそらく関係があります。直接的に模倣しているというより、作品の根に共通性があるのかもしれない）。 とにかく15時間ほど腰を据え、この不思議な桃源郷に滞在してみてください。多くのエンドやCG獲得のために繰り返し同じ文章を読まねばならないという苦痛も、真のエンディングに到達した際には、強い感動に置き換わることでしょう。全プレーヤーの４割弱しか「葬花」のエンディングに到達していないことを、私はとてももったいなく思います。

　↑のアート上のアピール"Japanese-style impasto style, the pursuit of the ultimate fineness."の部分だが、[b]この作品の段階では[/b]、まだ大言壮語が過ぎると感じる。 　その他は問題なく素晴らしい作品。オススメ。