Pimiko Plus のレビュー

全角英数めいたフォントが懐かしい、PC-9801後期を強く意識した雰囲気の作品。 作者はゆめにっきインスパイア系AVGをいくつか作っているアメリカ人のようだが詳しくは知らない（ごめん）。だがこの人物、ただものではない。なんと平成も終わろうというこの時代になってなお現役のPMD楽曲製作者なのである。 もちろんPMDとはあのKAJA氏が作ったFM音源ドライバのPMDのことである。作者のサイトでは実際にPMDやhootで聴ける .m ファイルも公開されており、中にはOPL（Commodore64やアーケード機で使われた2オペ音源）向け楽曲なんていう変わり種もあったりと、本気のレトロミュージック＆ゲームファンであることがうかがえる。 ゲーム内容は一言でいえばトレーディングシム。 Ruho Dugashobaちゃんという舌を噛みそうな名前のぽっちゃりガール（子持ち）を主人公に、ごく狭いワールドマップ内を行脚しながら品物を転売し、30ターンのうちにどれだけ所持金を増やせたかを競う。（…ん？じゃあPimikoって誰だ？） たまに追い剥ぎと戦闘になったりするのでRPGっぽさもあるが、探索や収集要素とかは特にないしストーリーも皆無…と足りない部分が目立ち、正直ゲームとしてはかなり物足りない。 1プレイの時間が短くストレスフリーなのは美点のひとつで、数周の間そこそこ楽しめるだけの下地はあるものの、これだけではおすすめには挙げられないだろう。 それを補う魅力があるとすれば、何よりも作者の嗜好が盛り盛りに詰め込まれたこの作風そのものにつきる。 なにぶんゲーム自体が小規模なこともあって作中ではさっぱり語られないのだが、よく見るとどれもこれもハイコンテキストな独自設定だらけである。可愛いドット絵に反して意外と殺伐としているポストアポカリプス世界、過去作からのカメオ出演と思われるキャラクターたち、ハングル似の文字に日韓露のフレーバーをミックスして作ったとおぼしき架空言語などなど…。 こういう風に作家性を前面に出していくスタイルはともすれば自己満足と紙一重にもなるが、それを恐れずさらけ出していることは確実にプラスの印象を生み出している。いかに説明不足であろうと、「なんだかよくわからないが面白い引き出しがありそう」と思わせることに成功した時点で勝ちである。 そこに説得力を与えているのがハイクオリティなBGMとアートワークで、これらのためだけに\500を払っても惜しくはないほど。 ゲーム自体はあくまで実験作の範疇を脱していないものの、作者の今後の活動に期待したくなる作品。 [h1]プレイのアドバイス[/h1] [list] [*]アイテム相場は馬鹿みたいに変動する。1個40Gで買ったアイテムが次のターンに1000Gになっていることもザラ。特に法則らしきものはないし、プレイヤーが在庫を放出したからって値崩れするようなこともないので、あるだけ売買してしまってかまわない。 ※ただし将来のバージョンでは変動アルゴリズムを導入したいとのコメントあり [*]Medikitは自分の回復アイテムとしても使えるので、常に携帯しておきたい（売買以外にも用途がある唯一の取引アイテム）。安い時は400Gくらいまで下がるので即座に買い占めよう。少々重いのが難点だが、高い時は簡単に15000Gを超えるので商材としても申し分ない。 [/list]