荆棘落尘埃 Dust On Thorn のレビュー

モノクロの画面で理不尽な世界を描く短編ノベル。ある日突然権利を剥奪された主人公が、分岐する物語でそれぞれ異なる少女と出会います。すこし百合要素の入った物語で、出会う状況も違えば個性も異なりどの物語でも二人の淡い信頼関係に引き込まれました。 無機質でモノトーンな背景、それにメッセージウィンドウに添えられた徽章とセリフ体の書体が簡潔にして美しく、独自の魅力をもっています。孤独な世界観と主人公の静かな語りによる地の文が調和していて、暗く静かな世界が魅力的でした。 もう一人の主役となる少女たちは異なる立場と個性をもっていて、ルートによって主人公の違った側面が見えてきます。すこしずつ近づいていく二人の距離感が気になる一方でこの世界をめぐる真実も迫ってきて、選択を迫られる中で動いていく二人の関係とその結末が強く印象に残る良作でした。